「立志12539;立言」論文コンテスト
出身校:[中京短期大学] 李 澤元(男)
「友好」という言葉を聞いて、私たちはまず何を思うのでしょうか。
友好とは、友達同士のような真の結びつきを持ち、そして、最後まで断ち切ることの出来ないものでなければ、本心から友好とは言えないのではないでしょうか。つまり、心と心の交流が出来ることだと思います。
日中関係は急速に親密なものになりつつあるのにもかかわらず、日中友好30周年を迎えた今でも、両国の人々がお互いに偏見意識を持っている人が少なからずいるということは、とても残念なことだと思います。どの国でも、偏見意識の一つに、言葉という壁があると思います。言葉が通じないと、どうしても偏見が生まれます。偏見を持ってしまうのは、人間として仕方のないことなのかもしれませんが、それを避けるようにお互い努力しなければいけません。
私は、大きな目標を持って日本へ留学に来ました。そして、たくさんの友達ができ、優しく親切な人とも出会いました。その人達とつきあっていると、時には共感し、時には衝突し、言葉の行き違いに戸惑い、悔しい思いをする時もありますが、気軽に何でも話せる、本当に心を開いてつきあえる友達も出来ました。いろいろな壁にぶつかることもありますが、それを乗り越える力をくれたりもします。多くの日本人と交流を持つことによって、お互いがすぐに心を開いて付き合うことは難しいし、日本語を上手に話せるか、又、中国語を上手に話せるかどうかの違いはあるものの、お互いに外国人と話をしているということは、同じことだと感じました。又65380;今まで自分が見ていた祖国である中国と65380;友達から聞いた中国を比べて、日本に来て初めて祖国を客観視出来ました。そう出来たことによって、私がどの国に対しても先入観を捨てて、世界に目を向けるきっかけとなりました。世界に目を向けることが出来ている人は、世界中でもごくわずかだと思います。授業で、先生から「自分の身近な世界の常識やルールにこだわらずに、もっと広い世界に目を向けることで、逆に自分の周りのことから見る目を養って欲しい」と言われました。その意味がだんだん分かってきました。違う文化の人と交流する機会があるからこそ、自分の文化への理解が深まると思います。異文化の中では、どこの国の人でも「郷に入っては郷に従え」という言葉が持つ意味を考えなくてはいけないと思います。その意味を知ることで、自分の文化の良さや短所をもっと上手に客観視出来ると思います。私は、直接多くの外国人と接してみて、それを知ることが出来ました。これから、もっと自分の視野を広げて、国際人として、自分の文化と異なる人たちとの時間を大切にしていきたいと思います。それが今、どこの国にでも必要な「国際交流」だと思います。自分の国のことばかりではなく、他の国への関心を少しでも持つことが、国際人として必要なことだと思います。
毎年春になると、日本国民は桜の花を観賞するのを楽しみにしています。桜というと、日本の国花であるように、日本人にとって最も身近な花であり、日本人の心の花という印象がありました。日本の自然や文化を体感することは、私が留学に来てからの目的の一つでもあり、日本人と一緒に満開の桜の下で花見をする機会を持てたことはとても嬉しいことでした。中国には花見という習慣はなく、花見は日本の国民的行事になっているといってもいいほど、日本の社会に根付いている日本独特の習慣だと思いました。桜には華やかな美しさがあり、又65380;誰が見ても美しいのであって、多くの外国の人々が日本の人々と同じように美しさを感じる度に、日本に対する思いが今より深くなっていけば、と思いました。私は実際に日本で生活をして桜を目にし、この花が昔から変わらず日本国民に愛され続けていることが理解出来たような気がしました。
中国の国花は牡丹です。桜と同じく、春を代表する花です。桜は華やかさというイメージがあるのに対し、牡丹には力強さがあり、栄華、富貴の象徴とされています。「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」と日本人女性の姿を例えている慣用句がありますが、これは凛とした雰囲気としなやかさを兼ね備え、自分を磨きながら、前向きに生きることによっての内面の美しさが、自然に外見に現れてくる素敵なイメージを持たせているのだと思います。この言葉の中にある芍薬と牡丹は、ともに中国から日本に伝わった花ですが、特に牡丹は日本各地に名所があるほどで、日本の代表花いってもいいほどの存在感があるのには驚きました。
私は、桜が春にだけ咲くものだと思っていましたが、日本人の友達から、春と秋の年に二度開花するという不思議な「四季桜」について話を聞きました。実際に自分の目で見て、とても深く重みのあるものに感じました。春の桜とは違って華やかさはありませんが、寒い秋風に揺られながらも、美しく咲いている四季桜の淡いピンク色が、何とも形容しがたく私の心を打ち、とても温かい気持ちになりました。桜は冬にじっとエネルギーをため、寒さにも耐え、そして春になると見事な花を咲かせます。しかし、この四季桜は年に二回も見事な花を咲かせます。生まれて初めて秋に咲く桜を見て、私は自分の成長について、とても大切なことを教えられました。
人間の成長というのは、桜と同じように、いつか花を咲かせようと、日々努力をしています。そして花を咲かせる過程で、いろいろなことを学びます。人間には常に支えが必要で、支えがあるからこそ頑張れることがあります。自分を応援してくれている家族や友達や支えてくれる周りの人の為にも、自分が描いた夢を実現出来るように、私は今どんなに苦労してでも頑張っているし、努力しています。人間というのは、いろいろな経験を積み、失敗を重ねることで、少しずつ何かが見えてくるものだと思うし、苦しみというのは、必ず心の糧になると思います。
人間には誰でも春を待ちわびる気持ちがあります。春の到来を知る喜びというものは、長い冬を過ごしてきた人のみが味わうことが出来る特権だと思います。どんなにきれいな花でも、最後は散ってしまいます。桜も牡丹も美しい花であり短命です。しかし、それを咲かす過程に、どれだけ多くのことを学ぶのか、ということを忘れてはいけないし、その学んだことは、きれいな花が散った後でも次に花を育てる時の大切な知恵として、いろいろなアドバイスをくれると思います。その花を咲かせるために学んだいろいろなことこそが、私たちの人生で最も必要とすることだと思います。目的地にだけ素晴らしいものがあるわけでもなく、何かが足りないから幸せになれないのでもありません。私がこうして頑張っているこの途中にも、何らかの幸せの花を咲かせることは出来ると思います。自分の花を咲かせるためには、努力と根気が必要です。誰もが出来ないと決めつけていることは、それは「出来ない」ことではなく「やらない」ということです。夢を諦めずに、自分の描いた将来に向かって頑張れば、絶対に叶うものだと思います。そして、夢が叶った瞬間に今までの苦労が報われ、行動しやり遂げた者にしか分からない感動を得ることが出来ると思います。自然の中でも、大樹の陰で小さく咲いている美しい花はたくさんあります。花は大輪である必要はなく、一つとして同じ花はありません。その人が満足の出来る花であれば、たとえどんなに小さな花であってもいいはずです。
しかし、いくら頑張っていても不安になる時があります。自信を持てずにどうしたらいいのか分からなくなる時もあります。そんな時こそ、しっかりと前向きに、努力を惜しまず努力を自信に変えて頑張らなくては、人間は開花出来ないのだと、努力とは、私たち人間にとって、将来の行く末を決める上でとても大切なものなのだと、そして、それは自分が立派な花を咲かせるまでの試練なのだと教えられ、しみじみと考えさせられました。四季桜のように、年に二度開花させることは出来なくても、私はこの過程で私の一輪の花を咲かせるために、一歩一歩自分の道を切り開いていこうと思います。
普通の花はまだ一人で咲かせることは出来ますが、友好の花は両国で育てていかなければなりません。両国でその種を大切に育んだ時、いつの日か本当の意味での「友好」という花を咲かせることが出来ると思います。自分の思いを満たすだけの気持ちが、いつの日か相手のことを考えることによって満たされる温かい気持ちに変わった時に「友好の花」は、見事な花を咲かせるのだと思います。
私が日本で留学生活を送る上での交流で一番学んだことは、どんなに心の中でこれを話したい、こうしたいと思っていても、態度で示さなければ相手には伝わらないということです。それもどちらか一方ではなく、両者が行動に出なければ、本当の心の交流は出来ないと実感しました。
それぞれ個性を備えた四季を持つ日本の自然は、日本人の感性が合わさっており、そんな日本文化が私は大好きです。言葉だけでなく、美しい自然風景や伝統的な文化、人々の暮らし、自分の目で見た日本の様子を、祖国の人々に紹介したいと思う気持ちが日に日に増し、私の新たな目的となりました。
私たちは自覚しなければなりません。世界で言う「友好」、皆の言う「友好」を、私たち一人一人の不正を許さぬ厳しい眼と、広く温かい思いやりの心をなくしては、永久に実現しないのだということを。一度しかない人生を、全ての人が真に人間らしく有意義に送ることの素晴らしさ、そして、真の友好関係を築く社会。そこに至る道がどんなに果てしなく遠いものであろうとも、一歩一歩着実に進むべきだと。私たちが行くこれからの未来、きっとこの場所にあると信じて65381;65381;65381;。
希望を持ち、国籍や人種という枠を越えて、そして何よりも"人として"互いに尊重し合い、励まし合い、協力し合う、若さと友情の輪を広げていこう。そして、笑顔という友好の花を咲かせよう。言葉や文化が違っても、「笑顔」は世界共通のものなのだから65381;65381;65381;。