外から見る中国と実際の中国の違い(抜粋)
香港の民主化を巡るデモ (高城 剛)
今週は、香港の民主化を巡るデモにつきまして、まったく別の観点から私見たっぷりにお話ししたいと思います。
50年間は「一国二制度」を続けると確約していた中国は、表向きは高度な自治を認めている香港にたいし、2017年の香港長官選を巡り、中央政府の意に沿わない人物の立候補を事実上排除する方針を決定し通達しました。これを機に、民主的な選挙を求める学生が政府施設の周りに座り込む抗議活動を開始。金融街のセントラルだけでなく、モンコックやジョーダンなど、街の中心地を次々と占拠しています。
先週、お話ししました国民平均年齢を見ると、香港は、ほぼカタルーニャと同じ年齢ですので、変革を望める最後の年齢あたりになります。また、今回もスコットランドと同じく若年層が変革を求める中心で(中高生が多数います)、世界中、大きな世代間格差が生まれていることが、香港のデモをみてもよくわかります。今回の発端も、実は家賃の高騰による若年層の生活苦と不満からはじまっているのです。
注視すべきは、米国が全面的に香港のデモ隊を支持している点にあります(僕は裏で暗躍しているとみています)。表向きは、香港の民主化に賛成の意を表しているように見えますが、実際のところ、このメールマガジンで何度かお話ししていますように、米国は東アジアが混乱したほうが国益に叶うのです。
それは、台頭する中国を押さえつける国防的観点からに他なりません。この点からすれば、日本としても、国防の観点からすれば香港が混乱していたほうが国益に叶います。
近隣の大国中国がひとつにまとまるより、常に問題を起こす地域が中国内あって、国外に出づらい状態になることが、国防的には日本のメリットになります。
よって、親日である香港と台湾を、いわゆる「ソフトパワー」戦略でこの機に取り込むのが日本にとって良策となります。これは「文化的にソフトに侵略する」とも言い換えられ、いまなら、米国のように民主化応援や観光戦略のフリをしながら、「ソフトパワー」戦略で香港を取り込む事ができるのが、いまの日本の機会だと思います。特に文化大革命で本土から逃げて来た香港文化人を、しっかりこの機にグリップする事が大切です。彼らは若年層ではなく、それなりのポジションにいる大人だからです。
今回の争乱を天安門事件と重ねる識者も多くいますが、天安門事件と違うのは、中国政府は香港民主化デモを「そもそも発生していないし、最初からなかったこと」にして、中国国内には一切「同調させるような情報を流さない」ようにしてる点にあります。しかし実際は、多くの中国人はインターネットやセットトップボックスを通じて、いま香港で起きている事を理解しています。これが、「外から見る中国」と「実際の中国」の違いなのです。
ご存知のように、中国は違法コピー大国であり、国家がどんなに規制をかけても、見えないはずのサイトを見る事など簡単なことです。中国当局は国内全てのウェブサイトに対し、香港での抗議行動に関するあらゆる情報を「直ちに」削除するよう命じたといいますが、実態は異なります。そんな中国より、日本のほうが、よっぽど政府の情報コントロールが利いているように僕には見えます。
金融セクターとしての香港は、今後弱体化するのは間違いなく、不動産バブルも崩壊へと向かい、中国政府がかねてより公言しているように、上海に金融センターを移すことが早まるでしょう。
また、中国共産党は面子の為にも、このまま「なかったこと」には絶対にしません。ここで折れれば、一党独裁の崩壊も招きかねないからです。
国慶節があける来週水曜日までに、大きな動きがあると思われます。なぜなら、連休があけると静観していた香港の人々の仕事と生活に支障が出て、問題が対中国ではなく、香港内の問題になってしまうからです(この問題のすり替えが中国共産党の策で、その前にデモ隊は過激になることが予想され、体制が手を出してくるのを煽ると思います)。なにしろ700万人の香港人のうち、デモに参加しているのは、まだ20万人だけなのですから。
『高城未来研究所「Future Report」』より抜粋